【バビル2世主従話】髪

ポメラDM100を購入したので、調子にのってスタバで30分一本勝負。(2014/12/25)
相変わらずの校正ナッシング\(^o^)/なのでご了承くださいメリークリスマス!!
いつどこでどういうシチュでとか、細かいことを考えないでいただけますと、わたしがありがたがります。

ところでポメラATOKは相変わらず3点リーダーが変換出来ないので激おこ。結局PC側で変換しないとでがっかり。
その他日本語変換も以前通りヘボすぎで、どんだけ辞書登録が必要なのこれ。

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「二人で並んで歩く時に悪目立ちするような、不似合いにならない姿がいいだろう」
 バビル様はそう仰って「ロデム、とりあえず人間の姿に」とわたしに変身を促した。
 いつも、その場その場で「ふさわしいと思う人間の形」になるように自分では都度気をつけていたつもりだが、そう言われると躊躇が生まれる。バビル様と並んで歩くのに不似合いではない。悪目立ちをしない。その言葉が意図するところは何だろう。
 年が同じぐらいだといいのだろうか。
 男女で歩くのと同性で歩くのは、どちらがその『不似合い』からより遠ざかるのだろうか。
 ああ、でも、同性の方がきっと行動範囲が同じに違いない。いや、だったら異性の方が何かあった時に別行動しやすいとか、何か。
 実際に悩んでいた時間は短かったが、新しい姿形を作るまでには様々な思惑が頭をよぎった。
 が、とりあえず、20代ぐらいの男性の姿になってみる。
「……もう少し若い方がいいかな。ロデムが年上に見えると、お互いの口調ではどういう関係かと思われるし」
「ああ、そうですね」
 それはまっとうな意見だと素直に頷き、もう少し若い人間の青年の姿になる。
 身長もあまり変わらぬほど。顔は特に誰を意識しているわけでもないが、きっと今までに見た様々な人間の顔を元に「なんとなく」で出来上がったものだ。自分では鏡を見なければ自分のイメージで作られた造作全てを完璧に認識することは出来ないが、そうそうおかしな顔にはなっていないと思う。
「ああ、それでいい。一つの場所に住む時に、あまり姿形を変えると怪しまれるからな。人間界に馴染むには良いだろう」
 椅子に腰掛けたバビル様はそう言うと、黙ってわたしの姿をじっと見つめる。
「どこか、おかしいでしょうか」
「いや……人間の姿の時、髪」
「髪、ですか?」
「ああ。それは、ずっと伸びないだろう?」
 難しい問いだ。
 確かにこの姿はこの姿であろうとすればまったくそのままで、人間が言うところの成長を伴うようなものではない。
「不自然に思われるでしょうか」
「そう思われるほど人とは接触しないとは思っているが」
「そうですね」
「ロデム」
 バビル様は、軽く手招きをした。
 何だろうと歩いていき、ついには椅子に座る彼を上から見下ろす距離にまでお互いが近くなった。
 すると、すっと右手が伸びてきて。
「以前から人間の姿になると不思議だったんだが」
「はい」
「髪を鋏で切ったら、どうなる?」
「そこもわたしの一部ですが、神経を殺して捨てることになりますね」
「そうか。増殖するわけでもないが、ロデムの体の一部には変わりないのか」
「そうですね。だからといって、試そうと切らないでください」
「不思議だな。完全に人間の髪なのに。この姿は誰かのコピーか?さらさらだな……髪質まで似せるのか」
「いえ、特に意識はしてないのですが……」
 バビル様は不思議そうな表情でわたしの「髪」に指を絡め、何度も上から下へととかすように梳く。
 一番近しい人間はバビル様で。きっとわたしの髪がその「さらさら」であれば、きっとバビル様がそれなのでは。そう言おうとしたが、言葉が出ない。
 なんだろう、これは。
 少しだけ、気持ちがよい。
 日常で外的刺激によって「気持ちがよい」という感覚がわき上がることは滅多にないことだ。
 天気が良いだとか。さわやかな風が吹くだとか。そういったものではなく、何かが自分に触れたその刺激から感情が動かされることなぞ。
 熱い、冷たい、痛い、とか。
 いや、それらは感情が伴わない。「気持ちが良い」は言葉通り「良い」という感情が伴うのだし。
「どうしたロデム」
 静かになったわたしを気にして、バビル様は手を引くとわたしの顔を覗き込んだ。
 ああ、終わってしまった。
 その刺激を失ったことで、いささかの落胆が自分の中で生まれる。
 なるほど。であれば、やはりさっきのそれは、自分にとってはとても良いものだということだろうか。
「いいえ。なんでも」
「ふうん」
 バビル様はいつも通り、わたしの言葉にあまり深入りをなさらない。
「水を持ってきてくれ」
「はい」
 それ以上、わたしが作った姿形に言及しないということは、これで良いということだろう。
 忘れないようにとわたしは今の形態を記憶しつつ、水が入った大きなペットボトルをバビル様に渡した。
 彼は、ゆっくりと、けれど、相当な量の水を飲み干すのに、顎をあげて瞳を閉じる。のけぞることで、少し長い後ろ髪がさらりとその背に触れる。
(同じではないですか。あなたが再生するとき、その髪も)
 いつも同じ形に再生されて。
 成長ホルモンというものが機能していているようで機能していない。再生が起きるときにその部分の細胞は活性化するが、爪は伸びるのだろうかとか、髪は伸びるのだろうかとか。そういった細かい人としての肉体の働きに関してはよくわたしも理解をしていない。
 けれど、長い眠りについた時に時折髪が伸びていることもあるし、そういえば、以前一度だけ足の爪を切っている姿を見たことがある。
(似ているけれど、違う)
 同じだとわずかでも思ったおこがましさを心の奥に追いやってバビル様を見ると、もう一本、と手をこちらに差し出してきた。
 用意しておいたペットボトルを手渡すと、それもまた飲み干そうと口をつける。
(違うけれど)
 もしも。
 先ほどバビル様がわたしに触れたように。
 バビル様にわたしが触れたら、この方は気持ち良いと感じるのだろうか。
 そもそも、気持ちが良いという感情はあるのだろうか。
「ふう」
 すべて飲み干して、無造作に空のペットボトルを足下に放る。
 窓から差し込む光に気づいたようで、そちらに近づくと彼はカーテンの隙間から外を眺めた。
「ああ、綺麗な青空だ。少し風も吹いているようだな」
「はい。快晴ですね」
「気持ちが良さそうだ」
「……そう、ですね」
 何かが見透かされたのではないかと、一瞬言葉が詰まる。
 けれど。
 バビル様は振り向くと髪をかきあげ
「町へ出よう。その姿が問題ないことを確認しに」
と告げる。
 滅多に見せないそんな仕草は、やはりわたしの思いを見透かしてのことだろうか。いや。そういう人ではない。わたしが知るこの方は、そういう人では。
「はい。わかりました」
 返事をする前に、既に彼は上着に手を伸ばして出かける準備を始めている。
 背を向け、フードつきのアウターを羽織る背中。
 フードにかかった後ろ髪を軽く手で整えてから、自分が放った空のペットボトルを踏んでしまい、苦笑いをしながら
「片づけといてくれる?」
「はい」
と可愛らしいわがままをおっしゃった。



おしまい。



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