しあわせなからだ

目が覚めたら、そこにレックスがいた。
「ああ・・・」
そうか。
昨日、一緒に寝たんだっけ。
「そうだ。未遂で終わったんだったな」
レックスに布団をかけてやって、寝間着を脱ぎ散らかしてとりあえず身支度を整える。
別に何があったわけじゃない。
どうやら私はレックスのことが好きらしい。
そこいらの感情はあまり得意ではないから自分では理解できないが、レックスに言わせると私はどうやらレックスのことが好きで、レックスも私のことを好きらしい。
思いが通じたもの同士は交わるものだと思っていた。
だから、そういうことをしようかと言ってみたのだがレックスはまた私を怒る。
結局私たちはただただ同じベッドで眠っただけだ。
レックスは怒りっぽい、と思う。
でも、レックスが私を怒っているとき、周りの人間は笑っている。
エーディンに聞いたら、レックスが私を怒るのは私のことを好きだからだと言う。
私はレックスを怒らない。
では、私はレックスを好きではないんじゃなかろうか?
そう言うとエーヴェルは困った顔をする。
そうじゃない、と教えてくれたのはジャムカだ。
アイラは、他の人間には感じない感情を絶対レックスだけに感じたりしているんじゃないか?
あのヴェルダンの男は難しいことを言う。
私には、考えてもよくわからない。

「うう・・・」
レックスがごろり、と体を動かして目をあけた。
「起きたか。おはよう、レックス」
「あー、おはよ・・・なんだ、もう起きたのか。早いな」
「私にとってはいつもと同じだ」
「ああ、女は朝の準備が長いからな」
そういうとレックスはゆっくりと上半身をおこした。
「?いや?シャナンが早起きだからな。」
「子供は元気だな・・・」
「シャナンのところにいってくる。きっともう起きているんだろうから」
「・・・マジかよ」
そういってレックスはがっくりとうなだれる。一体何がどうなのか私にはわからない。
「じゃあ。お前も部屋に戻って着替えるといい。私はシャナンのところへいく」
「・・・ああ、わかった」

シャナンのところに朝の挨拶にいって、身支度を整えてあげて戻ってくると、レックスはもういなくなっていた。
私はまだほんの少しぬくもりが残るベッドに横になる。
いつもなら、剣をもってすぐ練習にいくところだけれど。
ここで、昨日レックスと2人で眠っていた。
それがなんだかとても信じられない。
レックスはよく怒っているから、あんなに静かに眠る人間だとは思わなかった。
多分、あいつは女を案外知っているんだろう。
私が寝づらくてごそごそやっていたら、あいつは寝ていたはずなのに寝ぼけながら私を引き寄せる。
それで更に寝づらい体勢になってしまって腹立たしかったけれど、無意識でもそんなことが出来るのはきっと、そういうことだ。
私の髪を下敷きにしてしまうと痛くなって困るだろうから、とベッドにはいってから私の髪を手で何度も梳いて、レックスの方へ流れないようにしてくれた。それは私がするべきことだったのだろうが、そんな細かいところまで気がつくのは・・・ああ、だからきっとあいつはよく怒るのだろう。私は細かいことがよくわからないから。

その日はシグルド殿が忙しく動いている日で、私達は何一つ指示が出ていなかった。
取りたててすることも何も無く、町に出てちょっと闘技場で金稼ぎをして。
シャナンが昼寝をするのに付き合って。
ホリンが暇そうだったから剣の相手をちょっとしてもらって武器屋にいって。
珍しくラケシスが声をかけてきて、夕食を一緒にとって。
なんてことない一日だった。
「ふうー」
シャナンを寝かしつけてから部屋に戻る。
明日になればこれからの日程をシグルド殿が決定するのだろう。
私達は既に運命共同体になっていた。それでもとても身勝手な私は今だって本当はシャナンや自分の国のことしか考えていない。
私とラケシスを見てベオウルフは笑う。私達は肩肘張りすぎだと。
ラケシスは、そう見えるのはとても不当な評価で気分を害する、といって怒っているフリをしていたが、ベオウルフがいちいちカンに触ることを言うのがいつでも許せないわけではないようだ。
「疲れた・・・」
自分でつぶやいて、驚く。最近まで、疲れた、なんて口に出した記憶はとんとない。
服も着替えないでベッドに横たわると昨晩のことを思い出す。
どうして、私がセックスをしようといったらレックスは怒ったのだろう。
そして、どうして私達は今、一緒にいないのだ?
「・・・?・・・」
何かが今、心の中でひっかかる。
私は物を考えるのが苦手だからそれが何なのかわからない。
けれど。
たった一晩だけのことなのに、何故だかベッドは広くてゆとりがありすぎるような気がした。ほんの小さい、固い安普請なベッドだというのに。
寝返りをうっても邪魔するものがない空間。それはとても当たり前で、当たり前すぎて私の気持ちをなんだか刺激する。
私は昨晩のことを少しだけ思い出していた。

レックスの体は大きかった。というよりも私が小さいのだろう。
小さいといわれることは嬉しくなかったけれど、少なくともレックスは私を簡単に片腕でひきよせることが出来て、それはなんとなく嬉しくなる。・・・ということを、初めて気がついた。
男なんて、女と同じベッドにはいったら、もう、「そういうこと」しか考えられない生物だと思っていた。
私の国が落ちた時、私の国を荒らしたヤツラは少なくともそういう人間なのだと思う。
レックスはグランベルの人間だ。
グランベルの人間は、私達イザークの人間を同じ高さで見ないのだと思っていた。
キンボイスにシャナンが人質としてとられたときだって、何度も私は覚悟を決めた。
この体だけでシャナンが助けられるなら、なんだってする。
きっと、私に剣の腕がなければ。本当に体しかなければ、きっとそれを差し出さなければいけなかったのだろう。
実際に、あの城にいた兵士やら傭兵やらは、いつキンボイスがそういうことをするのかと期待して、いつだってあの嫌な目つきで私のことを見ていた。
「レックス、寝たか」
レックスは一瞬眉間に皺をよせて、それから目をあけた。
「呼んだか」
「・・・ああ」
「どうした。眠れないのか。2人はやっぱり慣れないか」
「レックスは2人に慣れているのか」
「・・・馬鹿なこと言ってるなよ」
そういうとレックスは私を引き寄せる。
私よりも少し体温が高いその腕で。

「どーした」
「今日はここで寝る」
「・・・って、おい、アイラ」
「駄目なのか。駄目なら駄目と言え」
「駄目じゃないけど・・・どういう風の吹き回しかと思って」
既にレックスは眠る準備をしていたらしくて、髪の毛が全部おりていた。そのレックスの顔は、嫌いじゃない。
「ちゃんと寝間着ももってきた。」
「・・・で、ここで着替えるのか!?」
「そうだ。寝間着でうろつくわけにいかないだろう。レックス、ちょっと出ていてくれ」
レックスの部屋にはいって、レックスを外に追い出した。
寝間着に着替えて、自分の衣類を畳み終えてから扉をあけてレックスを中にいれる。
「いいぞ」
「ああ。早いな。」
私はさっさとベッドにはいって壁側に向って丸くなる。
「寂しくなったのか」
「何が」
「寂しくてここに来たのか」
「違う」
レックスはそれ以上は聞かない。私もそれ以上は答えない。
ただ私は。一体この気持ちがなんなのかわからなくてここに来ただけだ。
だって、レックスは、私がわからないことを教えてくれるといった。
でも、何から聞いて良いのか正直なところ私にだってよくはわかっちゃいない。
私がベッドに入ってからも、レックスはそれから何も言わないで放っておく。いつもはレックスから色々とうざったいくらい声をかけられるものだから、それがないのがなんだか変な気分だ。
5分たっても10分たっても。
レックスは何も言わない。私は壁側を向いて丸くなっているだけだ。
「・・・寝ないのか」
「いや、寝るけど。俺はお前の部屋で寝ればいいのか?」
「・・・?何故だ?」
「・・・お前、寝に来たんだろ。1度だって俺と、とか、一緒に、とか言わないじゃねーか」
そう答えるレックスの声はかなり不機嫌そうだった。
「今朝だって、起きたと思ったらさっさとシャナンのところにいっちまうし。あれ、俺が目え覚めなかったら黙って出てったんだろ」
「・・・多分」
レックスがどうして不機嫌なのか、私にはよくわからない。そうっと体を起こしてそちらを見ると、レックスは私を見ないで暗い明かりで何か書物を読んでいた。
「寝ないのか?」
「・・・違うだろ。お前。来たのはお前じゃないか」
「・・・何がいけないのか、よく私にはわからん」
「あのな、いくら俺でも怒るよ」
「いつも怒っているくせに」
「・・・なんで、来たんだ。ここに」
「・・・わからない」
レックスは本をぱたりと閉じて私を見る。
「わからないのか」
「わからない。だから、来た」
「・・・最初から、そう言えよ。俺だっていつでも都合よくお前がして欲しい解釈できるわけじゃねーんだから・・・」
そういってレックスは立ち上がってベッドのふちに腰掛けた。けれど、まだ私の側には来ない。
「寂しくなったのか」
もう1度、さっきと同じ質問をレックスはする。
「寂しい?」
「うん。寂しくなって来たのか?」
さっき、否定したその言葉を私は反芻する。
言葉の意味を考えることも私はあまり得意ではないし、自分の気持ちを言葉にするのも、あまり得意ではない。
でも。
「・・・それは、どういう意味だろう」
「1人で眠るのが嫌だから来たのか。それとも・・・どうやら自分はレックスを好きらしいから、それなら一緒に寝ないといけないかも、なんていう馬鹿げた義務感からか?」
「それは二者択一なのか?」
「他にあるなら俺が聞きたいぐらいだ。」
難しいことを言う。レックスはやつにしてはめずらしく小さく溜息をついて言った。
「これ以上俺をがっかりさせないでくれ。多分お前は俺のことが好きだ。それは今だって間違ってないと思ってる。だからって何もかもお前にとっていいようにいいように俺がしてやるわけにはいかねーよ。」
レックスが言っていることが私には難しくて本当にわからない。
「いいよ、俺のベッドで寝て。・・・俺は、床か、お前のベッドで寝るから」
「・・・どうしてだ」
「どうしても。」
「レックスは意地悪だ」
「お前ほどじゃねーよ。お前の方がよっぽど意地悪だと思うね」
「なんで、そんなことを言うのだ」
「・・・」
私は、とてもいたたまれなくなる。
私は、本当に自分の心の中ですら言葉にすることも出来なくて。
レックスが言っていることが理解出来ない。
私は、レックスをがっかりさせて、そして、溜息をつかせて。
それは、怒られることの何倍、いや何百倍も私を悲しい気持ちにさせるような気がする。
「・・・何泣いてるんだ」
「え」
気がつくと、私は泣いていた。
涙を最後に流したのがいつだったのか、私は自分で覚えていない。
悔しくて泣いたことはあった。シャナンを人質に取られた自分のふがいなさが悔しくて、何度も何度も壁にあたっては目頭が熱くなったときもあった。でも。
「レックスが、意地悪を言うからだ」
「・・・それだって、本当は違うくせに。」
「違わない。レックスは、ひどいぞ。私が出来ないことをさせようとしている」
「・・・お前の方が意地悪だ。セックスしようなんて簡単に言うくせに、大事な事をひとつも俺に教えちゃくれねーんだから」
「私にはわからないことだらけだ。でも、それはレックスが知っているんだろう?」
レックスはベッドの上に乗っかって、近くにようやく来てくれる。
「違うのか。」
「・・・馬鹿だな。いっただろ。俺だって俺が知ってることしか、教えてやれねーって」
手を伸ばしてレックスは私を抱き締める。
どうしていいかわからない私はただただそれにしがみついて泣くだけだ。涙とは、こんなにも止まらないものだったのだろうか?
「レックス、教えろ」
「何を」
「私は、寂しくてここに来たのか?」
「・・・俺にも教えてくれ。お前はなんでここに来たんだ?」
「レックスと、一緒に、寝ようと思った」
「・・・どうして」
「わからない。わからないから、教えてもらおうと思ってきた」
それだけが私の精一杯の答えだ。
「それだけわかれば十分だ。・・・そうか。俺と一緒に寝たくて来たのか。だったら、一緒に寝よう。俺も、もう意地悪は言わない」
そういうとレックスは私を強く抱き締めて、何度も何度も髪を梳く。
私はただ、子供のように涙が止まらなくなってレックスにしがみつく。
一体この気持ちはなんだろう?
私を力強く抱き締める、自分よりも少し体温が高いレックスの体に安心して、瞳を閉じた。


Fin



モドル

すんません。セックスするとかしないとか下品な感じ!なんですが、アレはホラ、アレなゲームなので避けられない(笑)ことだと思いますので・・・。少なくともくっついた以上はあのゲームでは絶対アイラは子供産むわけで。
もし、産まなかったらこのアイラは「好きなようじゃ」止まりなんでしょう。レックスはとっくに「愛してしまったようじゃ」なのに!!(爆)
>男なんて、女と同じベッドにはいったら、もう、「そういうこと」しか考えられない生物だと思っていた。
いや、あたしもそう思うよ、アイラ・・・。あんた多分正しいよ・・・。(笑)

まあ、そんな話はおいといて。
この全然脈絡のない箇所で終わって、しかも一体こいつらどうなっちゃったの!?一体このタイトルは!?ってな感じなんですが。
この先はご想像におまかせいたします。エロ作家になるところだったよ。(っていうかそういうことなのか!?)STORYTOPのハートにもっとイヤラシイ色のハートでも作らないとダメか?とあせってみました。(ウソ)
タイトリングは今回ドリカムからです。人様の曲名から意識してタイトルもってくることないんですが、今回はトクベツ。
色々ツッコミ等あると思いますが(今回最大のツッコミは、「レックスは書物なんて読むのか!?」かもしらん・・・。いや、読まないと思いますよ・・・)お許しください。