へっぽこさん お誕生日記念!←ありがとうございます〜!!

男日照の長い人


 それは、一瞬の出来事だった。

「……別れの挨拶にしては、気が利いているだろう?」
「アイラ……」

 その時の親友の顔を、俺は一生忘れないだろう。
 不思議と嬉しさと恐怖の入り混じった、複雑な表情を。

「幸せになれ」

 漆黒の神を持つ戦女神は、そう言って少し騒然とした結婚式場を抜け出して行った。

〜〜レックスの日記より抜粋

 

 

 クロードの前で夫婦の契を交わしたアゼルとティルテュを、一斉に全員で取り囲んだ。

「おめでとう、アゼル、ティルテュ」

 満面の笑みで祝福するシグルドに、アゼルとティルテュは深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。戦時中にもかかわらず、こんなことまでしてもらって」
「本当に、ありがとうね、シグルド公子」

 涙ぐむティルテュの顔をアゼルに上げさせて、シグルドは隣にいたキュアンの方を見た。

「当然の事をしたまでだよ。な、キューちゃん」
「可愛い後輩の為だもんな。俺達みたいに、幸せになるんだぜ、二人とも」

 そう言って自分の妻を引き寄せるキュアンを見て、一斉に笑い声が上がる。

 笑顔を崩さずにキュアンの腕から離れて、エスリンはテュルテュのヴェールを取り外した。
 そのまま静かにティルテュの頬に口付けた。

「レンスター式のおまじないよ」

 そう言って微笑むエスリンの胸に、ティルテュは飛び込んでいた。

 シグルド軍では既にエーディンも結婚しているが、現在ちょうど妊娠中であり、式が終わった後も、
少し離れた位置で夫に寄り添われながら座ったままでいる。
 そう言った理由で、エスリンがティルテュにおまじないをしたのだった。

 

 ティルテュとエスリンの周囲から少し離れて、アゼルもまた、親友に囲まれていた。

「よかったな、アゼル」
「ありがとう、レックス」
「どうだよ、男になった気分は?」
「あんまりかわんないよ。護りたい気持ちは一緒だし、ただ、おおっぴらに一緒にいられるくらいかな」
「言ってくれるねぇ!」

 力一杯アゼルを締め上げるレックス。
 それを見ていたアレクやノイッシュと言ったアゼルの友人達も、一足先に結婚式を挙げた友人の髪や肌を
抓ったりして遊び出した。

 一頻り遊ばれた後で、男集団の中に入って来たのがアイラだった。

 アイラはレックスに言ってアゼルと向かい合うと、彼女にしては珍しく俯き加減に話を始めた。

「……これからすることは、私の気持ちにケリをつける為だ」
「へ? どうしたの、アイラ」

 嬉しさに、いつも以上に反応が鈍くなってるアゼルをキッと睨み、アイラは小さく鋭く告げた。

「幸せになれ。ティルテュを泣かせるな」
「う、うん」

 あまりの強い気に、押されながらも頷くアゼル。
 そして、アイラが動いた。

 素早く両手でアゼルの顔を固定すると、一気にその唇を重ね合わせた。
 周囲にいた連中の抗議の声すら上がる前に身体を離したアイラは、アゼルに背中を向けた。

「……私なりのケジメだ。幸せになれよ」
「アイラ……僕は、気付かなかった」
「気付かなくて当然だ。今、気付いたのだからな」
「アイラ?」

 アイラの肩が震えている気がして、アゼルは手をかけようとした。
 しかし、その手を振り払うように身体を避け、アイラは歩き出していた。

「……別れの挨拶にしては、気が利いてるだろう?」

 一足早く式の会場を去るアイラを追うのは、数名の視線だけだった。

 

 

 シグルドが用意させた披露宴会場に祝の席を移し、全員が勝手気侭に飲み始めている。

 何となくその中に加わり辛い感情を抑えられずに、アイラはテラスに出た。

「……お前か」
「俺じゃ役不足か?」
「この月夜には、絶世の美男さえ役不足だ」

 背後に感じたレックスの気配を読み取って、アイラはそう言った。

「確かにこの月夜じゃ、半端な男は役不足だな」

 そう言ってテラスに出たレックスは、アイラとは離れた位置で柵にもたれかかった。
 そんなレックスを見るでもなく、アイラは独り言を呟くかのように話し出した。

「いい挨拶だと思ったのだがな」
「新郎にキスすることが?」
「ティルテュには見えなかっただろう」
「見えてたら、雷が落ちてたぜ」

 いきなり笑い出して、アイラはグラスをテラスから放り投げた。
 一瞬後に起きるグラスの割れる音を聞いてから、アイラはレックスの方を向いた。

「フン……役不足だな」
「余計なお世話だな」
「この月夜にも、私にもな」

 漆黒の髪をなびかせて、アイラはテラスから会場の方へ戻りかけた。

「あぁ、そうだ」

 思いついたようにそう言って、アイラがテラスに残るレックスの方を向いた。

「忘れものをしていた」
「あん?」

 スッと無造作に近付き、やや薄い感じのするレックスの額に手を当てる。

「……薄い髪だな」
「余計なお世話だ」
「お前ではやはりまだまだ役不足だな」
「だから?」

 誘うようなレックスの言葉に、アイラは軽く首を横に振った。

「……お前も、幸せを探すんだな」

 そう言って会場に戻って行ったアイラの背中が人の中に消えるのを待って、レックスは軽くグラスを持ち上げた。

「今だって、充分幸せさ」

 

 

 新婦の嬌声と、新郎の苦笑い。

 彼らに一時の安らぎを。

 

 そして、明日なき戦士達に幸せ…あれ。

 

<了>


後書き

 まずはお誕生日、おめでとうございます。
 新しい扉を開いたへっぽこさんに、バースデープレゼントを送らせていただきます。

 レックス×アイラが大好きなヘッポコさんに、レックスとアイラを見せてあげたかったんです。
 それも、他の人からは見えないような二人を。

 題名は最初、「アイラ」でした。
 でも、何か面白くなくて。
 ボツにした作品の題名が、まさに「アイラ」だってので、そのまま転用。

 どうでしょうね。
 峻祐的にはアイラがアゼルにキスしただけで満足なんですが…。

 

 では、他愛のない後書きもこれで終了。

 明日なき戦いを続ける彼らに、一時の安らぎを。
 願わくば、現代に戦う全ての方々に、幸福あれ。

小田原 峻祐


ありがとうございます、小田原さまvv誕生日にこんなステキなものを〜!!ウレシイです〜!!
小田原さまは陶酔ラヴァーズがcalenにお引越し(以前は広告付きのとこでやってたのです)した4月くらい?からずっと遊びに来てくださっています。同じ物書きとしてとても親しくしていただいております。
レクアイ!とのた打ち回って読んだら、うおー、こんなレクアイ見たことない!っていうかここからレクアイに発展しちゃうの!?とすさまじい妄想でアドレナリンが分泌しました。(笑)しかもアイラ→アゼルってのがまた小田原さんらしいわ!
本当にステキなもの、ありがとうございました。後書きの「明日なき戦いを続ける彼ら」で不肖へっぽこ泣きそうになりましたが・・・。
ちなみに壁紙は、アイラのため、というより花嫁であるティルテュのために選んでみました。

2001/10/20 へっぽこ

モドル